なかなか治らない傷?(症例の紹介)

2023.11.10

こんにちは。獣医師の工藤です。

最近ぐっと寒くなったせいか、やや風邪をひきました。気を付けないとだめですね。

今回は当院に受診された患者さんの症例の紹介です。

「そんなこともあるんだなあ」と思っていただければと思います。

9月に初診で受診された患者さん、最初の主訴は「首にできものができた」でした。

初めの状況は下あごにかさぶたのついた1㎝くらいの傷があり、少ししこりのように腫れているという状況でした。

(傷の写真を撮っていなくてお見せできず、、)

傷があるときはとにかく清潔にしてわんちゃん、ねこちゃんが自分でひっかいたり舐めたりしないようにするというのが治療の鉄則です。

かさぶたは傷の治癒過程で形成されてきますが、よくよく見ると周りの毛がびっちりくっついてジクジクしていることが多いです。毛やジクジクは汚れになり、傷や皮膚炎を治すのを妨げてしまいます。

このわんちゃんは後ろ足で頻繁に掻いているとのことでしたので、院内でかさぶたはバリカンカットし、エリザベスカラーをしっかり着けてもらう、化膿していたので抗生剤の内服をしっかりと飲んでもらって次回の再診としました。

通常の傷の治療であれば治療を開始して2週間前後で治るかかなり小さくなるのが普通です。

ところが2週間経っても傷の大きさは小さくならず、という結果でした。

抗生剤の効きが悪いと傷の治癒は遅れてくるので抗生剤の変更もしましたが結局1か月経っても治りませんでした。

こうなると、もしかして普通の傷ではないのでは?と考えなければなりません。

例えば、傷の下に小さなトゲなどの異物が混入していると治らない原因になります。また、傷自体が何か腫瘤の一部であったり皮膚病を原因としている場合には治らないこともあります。

飼い主様と相談し、麻酔をかけて詳しく調べさせていただくこととなりました。

麻酔をかけて傷の周囲を詳しく見てみるとちょうど傷があるところの真上の歯がなく、歯茎がわずかに赤くなっていたのでレントゲンを撮りました。

矢印の部分に注目してください。 白く映るものが見えますね。これは歯の根っこの一部です。

後から飼い主様に確認をしたところ、過去に他の病院さんで歯周病の治療として歯を抜いたことがあるとのことでした。

おそらく抜歯をした際に根っこが折れて中に残ってしまったのだと思われます。

日々の診察をしているとお顔が腫れてきた、急に傷ができたと来院される患者さんがいらっしゃいますが、これは外歯瘻といわれ、歯周病(いわゆる歯槽膿漏)が原因です。

初めは軽い歯石や歯茎の炎症から始まる歯周病も図のようにどんどんと進行し、やがて歯の根っこに達すると根っこ付近で膿んでしまいます。膿が逃げ場を失うとほっぺや体表面に管を作って傷になってしまうのです。

今回の患者さんも残った根っこを取り除き、1週間後に診察に来ていただくと傷はすっかり治りました。

(傷自体を縫ったり切ったりはしていません。)

皆さんのおうちのわんちゃん、ねこちゃんのお口の中はどんな様子ですか?一度ついてしまった歯石はなかなか歯磨きでは落とせません。歯周病の治療をして痛そうな歯を抜いてあげるとごはんをよく食べるようになったと喜ばれることも多いです。うちの子は大丈夫かな?を思われた場合はぜひ相談にいらしてください。

そして、日々のケアもとっても大切です。詳しくは2023年8月11日の織原先生のブログをのぞいてみてください。

きれいな歯から楽しいごはんを!(^-^) 

うちのわんこも最近歯が汚れてきたのでスケーリングをしないと、と思っています。

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