気付きにくいけど怖い病気 ねこちゃんの心筋症
2022.2.11
こんにちは。獣医師の今地です。
先日の獣医師勉強会でねこちゃんの心筋症について学ぶ機会がありました。心筋症とは心臓の筋肉の異常によっておこる心臓の病気のことです。
ねこちゃんの心筋症にはいくつか種類があるのですが、中でも肥大型心筋症という病気が一番多い病気です。
わんちゃんでは中高齢の小型犬に僧帽弁閉鎖不全症という心臓病が多くみられますが、ねこちゃんの心筋症は年齢関係なく若齢の子から高齢の子まで発症する可能性があります。
肥大型心筋症では心筋が厚くなり血液をためて全身に送り出す空間である左心室の容量が小さくなってしまいます。すると、心臓が一度に送り出せる量の血液が少なくなってしまい、心臓内に血液がうっ滞してしまい、肺に水がたまった状態である肺水腫や胸の中に水がたまる胸水貯留という状態になることがあります。肺水腫や胸水貯留の状態は肺のはたらきを妨げてしまうので呼吸が苦しくなり、命に関わる状況となってしまいます。
右側の写真が肥大型心筋症で左心室の容量が小さくなってしまったねこちゃんのエコー検査の画像です。オレンジの枠線で囲った部分の大きさが左の写真に比べて小さいのがわかるでしょうか。
わんちゃんの心臓病では初めに咳をしていることから見つかったり、病院に来られたときに聴診で心臓に雑音があって見つかることが多いです。しかし、ねこちゃんの心筋症では咳をしないことも多く、また咳をしていてもわかりにくいこともあります。さらに、心臓の雑音もないことがあるため見つかりにくく、見つかった時には呼吸が苦しくて、元気がなくなって、かなり進んでしまっていたということもあるようです。
当院でも心臓病を疑うような症状がなかったにもかかわらず、偶然レントゲンを撮影したことで心臓病が見つかり治療中のねこちゃんがいらっしゃいます。
右側が肥大型心筋症のねこちゃんのレントゲン写真です。左側に写真に比べてオレンジの枠で囲った心臓の大きさが大きくなっているのがわかります。
また、別のねこちゃんでは肺に水がたまってしまう肺水腫という状態になり、来院時は呼吸が苦しそうな状態でした。利尿剤というたまった水を出してあげるお薬を使い、呼吸の状態が落ち着いたため、今は飲み薬で通院していただいています。
左側の写真が利尿剤を使う前、右側が使った後の写真です。
心臓の周りの白くもやっとした部分がお薬を使った後に小さくなり、心臓の輪郭もはっきりしているのがわかるでしょうか。
先ほども申し上げた通り、ねこちゃんの心筋症は気づきにくく、見つかった時にはかなり状態が悪くなってしまっていたということもあります。また、わんちゃん、ねこちゃんは病気で体調が悪くても隠してしまうことがあるようです。
ぜひ、この機会に健康診断を受けてみてはいかがでしょうか。
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