慢性腎障害
2022.6.10
こんにちは。獣医師の小田です。
当院では毎月1回獣医師ミーティングと称して、知識のアップデートと獣医師間の検査・治療方針の統一を図っています。
今月は犬猫の慢性腎障害についてまとめました。犬は一生のうちに10頭に1頭、猫は3頭に1頭がなるといわれているくらいメジャーな病気です。
腎臓は糸球体、尿細管という組織から構成されるため、どこが障害を受けるかによって病態が異なります。
猫は尿細管が障害を受けることがほとんどですが、犬は糸球体が障害を受ける場合と、尿細管が障害を受ける場合が同じくらいあります。
また、犬では先天性の腎異形成も存在し、稀ではありますが犬猫で血栓による血管系の疾患もあります。
まずは検査項目について説明します。
腎臓が悪いと血液検査のBUN,Creが上昇してきます。これらの血液検査項目は腎臓の75%が障害を受けてようやく数値が上昇することがわかっています。
Creは筋肉量に影響されるため、日本で多く飼育されている小型犬ではたとえ腎疾患があっても正常値であることもよくあります。
この問題を解決するために、腎疾患の早期のバイオマーカーであるSDMAという項目があります。
健康診断では必ず測定していますが、健康診断でなくても、腎疾患が疑われる場合は、院内の血液検査機器での測定も可能です。
SDMAは腎臓の40%が障害を受けると上昇することがわかっています。
また、腎臓は尿を濃縮する臓器なので、腎機能が60%低下すると尿比重が低下し、尿が薄くなります。
このため、当院の健康診断には血液検査だけでなく、尿検査も含まれています。
上記をまとめると、一般的にはSDMA上昇→尿比重低下→BUN,Cre上昇の順に生じることがわかります。
ただし、すべての子がこの順番に悪化するわけではありませんし、
先程説明した病態によっても異常が認められる順番が異なります。
こうした検査項目で異常が認められた場合には腎疾患の可能性を考慮して、
治療の必要性や治療内容を検討するための追加検査を行っていきます。
追加検査には以下のようなものがあります。
①腎臓自体の形や構造を調べる超音波検査
②腎臓の糸球体が障害を受けることにより尿中に蛋白質がもれでてきていないかを調べるUPC
③高血圧の有無を調べる血圧測定
これらは、健康診断の報告書で、腎疾患が疑われた際に追加検診としてお勧めしています。
これらをすべて調べたうえで、情報を整理して治療内容を決定していきます。
なお、腎臓病の療法食は一般的なフードとは異なる栄養組成となっているため、腎疾患があるすべての子に適応というわけではありません。
腎臓が悪いから、あるいは腎臓が悪くなるのが心配だから、と与えると、逆に悪影響を及ぼすこともあるため、必ず獣医師にご相談ください。
配信内容:行動治療をご利用いただいた患者さまの写真、問題行動予防について、動画で見る行動学、小田のひとりごと
画像は1月2日~2月23日までのInstagramです。
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