全身麻酔のリスクについて
2024.4.29
初めまして今年の1月から勤務させていただいています獣医師の山口洸太と申します。
飼い主様は普段目にしづらいですが獣医療において切っても切り離せない全身麻酔についてのお話を少ししたいと思います。
全身麻酔は獣医療において人医療以上に身近なものです。
例えば人間だったら歯の処置をするとき口開けといてくださいと言っておけばあけてくれますが動物はそうはいきません。
CTやMRIを撮影するにもじっとしていてはくれないので全身麻酔が必要になります。
全身麻酔が必要になるシチュエーションの多い獣医療ですがやはり麻酔処置というのは100%安全なものではありません。
様々な全身麻酔を要する手術をした患者を集めて麻酔関連死が発生した割合を調べると0.14%とする報告もあります。これは約1000頭に1頭の確率となります。
ここから手術内容を当院でも多い避妊、去勢手術に絞るとその麻酔関連死の発生率は0.009%とする報告もあります。
ここまで発生率が下がる要因は様々考えられますが避妊、去勢手術を受ける患者は若く、健康であることが多いというのが一つ大きな要因としてあると思います。
ここで重要になってくるのは手術の前にその患者さんがどれほどの麻酔リスクがあるかを推定することです。
麻酔リスクを推定する一つの指標としてASA-PSというものがあります。
よく”高齢だけど麻酔はかけてもいいものですか”という質問を受けることがありますが年齢が高いことというのは確かに若齢の子に比べればリスクとなりうる要因になりますがこのASA-PSでみると高齢であることだけであればclassⅠまたはⅡのリスクとなります。高齢であること自体は全身麻酔のリスク因子とはなりますが麻酔を絶対にかけることができない理由にはならないことが多いです。
ClassⅠ-Ⅱと比較しClassⅢは4.8倍、ClassⅣ-Ⅴは19倍の麻酔関連死のリスクがあると言われています。このように術前に患者さんの状態を評価することは手術の結果を大きく左右することとなります。
当院では手術当日に麻酔前の身体検査と血液検査とレントゲン検査を必ず行い麻酔リスクとなる基礎疾患の有無を確認し麻酔をかけることができるかどうかの判断をします。
全身麻酔に関して心配事や気になることがありましたら当院の獣医師に質問していただければご相談に乗ることができるかと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
きたのさと動物病院 併設/札幌どうぶつ皮膚科・耳科センター
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