耳科の実績

耳の病気は、耳介、外耳道、鼓膜、中耳、内耳のどこかに病変があります。また、耳の病気は皮膚病と関連が深いため、耳の病気を治すためには皮膚と耳の病気の知識が必要です。

耳介の病気

耳介の病気は外耳炎に伴うものと耳介が主病巣になるものにわけて考えると診断や治療がしやすくなります。アレルギー性皮膚炎は耳介が主病巣になったり、外耳炎に続いて耳介炎が起こることもあります。アレルギー性皮膚炎以外の病気で、比較的よく見かける耳介の病気は、ニキビダニ症、疥癬、皮膚ステロイド症、甲状腺機能低下症、寒冷凝集素疾患、耳辺縁の脂漏症、皮膚腫瘍、皮膚糸状菌症、若年性蜂窩織炎、蚊刺咬症、落葉状天疱瘡など非常に多彩です。いずれも特徴的な症状と検査から診断がつくことが多いです。

外耳道の病気

ワンちゃんでは外耳炎の診察が非常に多く、当院では1日10件以上診察することもよくあります。外耳炎の原因は様々ありますが、脂漏症、角化症のワンちゃんで最も多く、アトピー性皮膚炎でも外耳炎が起こります。飼主さまに食物アレルギーとの関連を聞かれますが、脂漏症、角化症、アトピー性皮膚炎に比べると食物アレルギーが原因であることは少ないです。そして、外耳炎が治りにくくなったり、発病するきっかけになるのが、日ごろの耳洗浄だと思っています。一方、ネコちゃんの耳の病気はそれほど多くはありませんが、アレルギー性皮膚炎、耳ダニ、鼻咽頭ポリープなどが見つかることが多いです。また、アメリカンカールの外耳炎は非常に治りにくいことがあります。

食物アレルギーによるマラセチア性外耳炎

(治療前)

食物アレルギーによるマラセチア性外耳炎

(左の写真の治療後)


軽度のアトピー性皮膚炎による外耳炎と中耳炎が慢性化した結果(治療前)

軽度のアトピー性皮膚炎による外耳炎と中耳炎が慢性化した結果(治療後)


体毛の蓄積が原因の鼓膜喪失と中耳炎(治療前)

体毛の蓄積が原因の鼓膜喪失と中耳炎(治療後)


甲状腺機能低下症と食物アレルギーを併発していた外耳炎

慢性化した外耳炎の末期:アポクリン腺腫瘤と出血を伴う中耳炎


角化症に伴う耳垢性外耳炎

慢性化した外耳炎の末期:耳道の骨化と慢性肥厚


鼓膜とその周囲の病気

角化症、脂漏症という生まれつきの体質を持ったワンちゃんは耳垢が多くなりがちです。また、角化症、脂漏症の長毛種となれば、耳の中に毛が生えた犬種も多く耳道から耳垢を排泄しにくくなります。それらが原因で耳に汚れがたまります。また長毛種はトリミングに行く回数も多く、耳を洗う機会が多くなります。こんな負の連鎖があり、いずれも耳を悪くする大きな原因になります。その全ての要因に対処しなければ耳の病気は解決しません。写真は鼓膜手前に耳垢や毛が蓄積し、通常の耳洗浄ではきれいにできない状態です。セカンドオピニオンで来院されるワンちゃんで最も多い病気の1つです。

中耳の病気

中耳の病気は「鼓膜とその周囲の病気」に続いて起こることが多いです。中でも短頭種で多く、フレンチブルドック、アメリカンコッカー、イングリッシュブルドック、シーズーでは要注意です。これらのワンちゃんが長期にわたって外耳炎が続いた結果、中耳炎となり、それらは治療しても治らない末期の状態に至っていることが多いです。この状態は痛みを伴い口を開けづらくなります。それを解決するためには手術が必要で、しかも高齢になっていることが多いのも特徴です。他にも滲出性中耳炎(キャバリア)、ネコちゃんの鼻咽頭ポリープなども中耳の病気として見られます。

フレンチブルドックの中耳炎

フレンチブルドックはアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、脂漏症、甲状腺機能低下症など皮膚病になりやすい犬種です。さらにフレンチブルドックの耳道はもともと入口がとても広く、鼓膜手前で極端に狭くなっています。もし、これらの皮膚病を発症すると外耳炎が起こりやすくなります。外耳炎が起こると耳垢が溜まり、耳洗浄による耳道刺激があったり、微生物の増殖など負のサイクルに陥ることがあります。さらに耳道周囲の体毛が耳の中に入りやすいため、鼓膜手前に毛が蓄積します(写真)。体毛、微生物が増殖した耳垢、皮膚病の放置といった悪化因子が重なると非常に重度の中耳炎になります。

 

さらにフレンチブルドックの初期の中耳炎の症状にはなかなか気付けないことが多いです。このことも病気を進行させる大きな要因になっています。皮膚病が治療されていないフレンチブルドックは耳の病気に要注意です。

鼓膜手前に体毛が蓄積

 

鼓膜手前に体毛の蓄積があります。外耳炎は強くありませんが、何らかのきっかけで外耳炎を起こすと、とても治りにくくなります。この時点で体毛の除去が望ましいです。

外耳炎の発症

 

外耳炎を発症すると耳垢が蓄積し微生物が増殖します。耳道の奥がはれて狭くなっています。この時点でしっかり治療することがとても大切です。

外耳、中耳の蓄膿

 

耳の奥に膿が溜まっています。中耳炎を発症していることが多く顔面神経麻痺、内耳炎による前庭障害といった神経症状が出てくることがあります。ほとんどの場合、根治には全耳道摘出と鼓室胞切開術が必要です。

ポリープや腫瘤を伴う耳道炎と中耳炎

外耳炎が慢性化すると過形成、アポクリン腺腫瘍、炎症性ポリープ、鼻咽頭ポリープ(猫)などにより耳道が狭くなったり、閉塞することがあります。これが原因で外耳炎が治癒せず中耳炎に至るケースがよくあります。この状態になると生涯にわたり治療が必要になったり、根治には手術が必要になることもあります。

キャバリアの滲出性中耳炎

耳ダニ感染後の鼓膜喪失と中耳炎

長く耳ダニに気付かず治療が遅れた猫です。すでに鼓膜を失っており、中耳をきれいに洗浄すると赤い肉芽が確認できました。この肉芽を除去し点耳薬で治療すると改善。鼓膜が全く残っていないため鼓膜の再生は期待できませんが、痛みや痒みもなく元気に過ごしています。

中耳炎から脳炎へ

細菌性外耳炎を治療せずに長期間過ごすと、中耳炎を起こし、中耳炎は内耳炎へと進行します。内耳炎を起こすとめまい、まっすぐに歩けない、立てないなど前庭障害を起こします。さらに内耳炎は脳炎へと至ることがあり、脳炎は命に関わる重大な病気です。ここまで重症化することは多くはありませんが、それでも年に数頭見かけるのも事実です。重症の外耳炎は命に関わることを知ってください。

内耳の病気

内耳には、三半規管や蝸牛といった平衡感覚やまっすぐに立つために必要な神経があります。ここに障害を受けると、どちらか一方に首を傾げたり、重症になると体も同一方向にねじれたままになります。そうなると、しっかり立てなくなったり、真っすぐに歩けなくなります。この状態を捻転斜頸、前庭障害と言います。前庭障害は内耳炎、前庭神経の病気、脳の病気によって起こります。