歯磨きの仕方
2023.8.11
こんにちは、獣医師の織原です。
ワンちゃんの歯の健康で欠かせないのが”歯磨き”です。
ですが人間の歯磨きと違い、ワンちゃんの場合は飼い主さんがやってあげなければいけないので負担も大きいものです。
ただ、ワンちゃんでは歯垢が3日ほどで歯石になってしまうと言われているので、できるだけ毎日歯磨きをしてあげるのが理想です。
歯のケアの方法としては、歯ブラシのほか、綿棒による清掃や歯磨きシート、歯磨きガムなどがありますが、今回は最も効果が高く一般的に推奨されている歯ブラシによる歯磨きの方法を紹介します。
必要な道具としては
・歯ブラシ:小児用か動物用の小さいサイズのものがよいです
・歯磨き用デンタルジェル
・化粧用コットンかデンタルシート:小さめの物のほうが使いやすいです
・仕上げ用デンタルジェル:(可能であれば。酵素配合のものなど)
を用意してください。


それでは具体的なやり方を紹介していきます。
①ワンちゃんの前から方法と、後ろから行う方法があります。
前からの場合は自分の前に立たせるか座らせて、後ろからの場合は後ろから抱きかかえるようにすると良いでしょう。
②歯ブラシを水で濡らした後、デンタルジェル適量をつけます。
③まず上の歯から歯ブラシを当てていきます。
歯ブラシを持っていない方の手でマズルを保持しつつ、指で唇をめくり上げるか後ろに引っ張って歯を見えるようにします。
一番奥の方の歯は引っ張っても見えにくいので、あまり強く引っ張る必要はありません。

④犬歯や一番大きい奥歯(奥から3番目の歯です)が特に汚れが溜まりやすいので、
重点的に磨くと良いでしょう。左か右どちらかから始めて犬歯から奥歯へと進めていきます。
一番奥の歯は見えなくても歯ブラシを奥の方に差し入れて手の感覚で磨きます。
表の方が一般的に汚れが多いので表側から先に磨きます。その後裏も磨いていきます。

⑤奥歯が終わったら前歯です。
前歯の方が嫌がることが多いので嫌がるようであれば無理はしないでください。
口先の唇を捲り上げて磨いていきます。
⑥上の歯が終わったら今度は下の歯に移ります。やり方は上の歯と同じで、表から裏、犬歯から奥歯、その後前歯と進めていきます。
⑦歯ブラシが終わったら次は拭き取りです。ブラシで浮かせた汚れが歯の表面に多くついているので、
水で濡らしたコットンかデンタルシートを歯に当てて擦るように拭いていきます。
順番はブラシと同じようにやっていきます。指を裏側に入れるのが難しければ表側だけ拭くのでもいいでしょう。
奥歯は見えませんが指を口角から差し入れるようにして行ってください。
⑧余裕があれば、最後に仕上げ用の歯磨きジェルを指に適量つけて、歯の表面に満遍なく塗っていきます。途中で足りなくなったらまたジェルを足して塗っていきます。
これは水分を保ってくれて汚れが付着しにくくなったりする効果や、酵素配合の物を使うと酵素の力で残った汚れを分解してくれる効果が期待できます。
⑨終わったらワンちゃんをたくさん褒めてあげてください。
ご褒美として少量のおやつをあげてもよいかもしれません。
ワンちゃんが歯磨きを嫌になってしまっては大変なので、決して無理はせず、少しでもできたらなるべく褒めてあげることが必要です。
歯磨きは習慣化することが大事で、朝でも夜でも構いませんので、飼い主さんが一番やりやすい時間に行ってください。毎日行うのが理想ではありますが、続けるのが無理そうであれば2日に1回や3日に1回など、続けられるペースをみつけることも必要になってきます。
歯磨きをしたことがないワンちゃんではとても嫌がることが多いと思いますので、そういう場合は無理に行わず、まず徐々に歯に触ることから慣らしていくことが必要です。
最初はマズル(鼻先)や口元を触ることから初めて、それに慣れてくれば次は唇をめくる、その次は指で歯に触る、次はブラシを歯に少し当ててみる、という風に何日もかけて少しずつ慣らしていくことが必要になります。

ワンちゃんが歯磨きを嫌になってしまうと、もちろん強く嫌がっているのを無理やり行うのは非常に難しいですし、飼い主さんのモチベーションとしても辛くなってしまうので、抵抗なく歯磨きをできるよう段階を踏んでいきましょう。
ただし、一度歯垢が歯石になって歯に固着してしまうと、それは歯ブラシでとることができず、病院でスケーリングをして除去する必要があります。
歯石が多いと歯周病にもなりやすくなり、歯周病があると歯ブラシの際にも痛がってうまくできないことが多くなりますので、歯に歯石や汚れが多かったり、歯茎が充血していたり、歯ブラシをして歯茎から簡単に血が出るようであれば、まず病院でスケーリングを行って歯周病を治療してから歯磨き習慣をつけていくことをお勧めします。
スケーリングは予約した上での全身麻酔での処置になりますので、詳しくは病院スタッフにお問い合わせください。
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