咳をしていませんか?
2023.5.10
こんにちは。獣医師の今地です。
突然ですがご自宅のわんちゃん ねこちゃんは咳をしていないでしょうか。
咳はどんな咳ですか?すぐに止まる咳ですか?一度始まったらなかなか止まらない咳でしょうか?
普段の診察で飼い主様から咳をするんですが、、と言われるとき、私たちは様々な病気を考えます。
しかし、咳といっても原因となる場所は様々です。
今回は比較的症例が多い、気管の問題、心臓の問題、感染症について話をしていきます。
飼い主様から「咳をしています」とお話をされた時、必ず確認することがあります。それは
①いつから?
②一日何回?
③一回始まると何回くらい続くか
④乾いた咳?痰が絡んだような咳?
⑤どんな時に咳が出るか
⑥以前からある場合は回数が増えた?
これらのお話から病気を推測していきます。
例えば、気管に問題がある場合。
「気管虚脱」という病気を聞いたことはありませんか?
この病気は気管を支えている軟骨が呼吸をしたときにペシャっとつぶれてしまって咳が出てきます。
飼い主様からのお話で
・散歩で引っ張った時や興奮した時に多い
・一回始まるとなかなか止まらない
・乾いた咳
などのお話が出てくると気管や気管支に問題がありそうかな?と考えます。
実際に気管虚脱の子のレントゲンです。


息を吸ったときに気管がつぶれてしまっています。
次に、心臓に問題があった場合はどうなるでしょうか。
心臓が原因となって咳が出る場合として一番多いのは僧帽弁閉鎖不全症による左心房拡大が原因です。簡単に言うと、心臓の弁の閉まりの問題で心臓が大きくなり、気管を圧迫することで起こります。
飼い主様から、
・年とともに徐々に増えてきた
・回数は一日に数回程度で2,3回咳こんでおさまる(長くは続かない)
・走った後や水を飲んだ後にむせるような咳をする
などのお話が出てくると、心臓に問題はないかな?と考えます。
心臓病が原因となっている場合は身体検査で心臓の雑音が聞こえることもあります。
実際に心臓病が原因で咳が出ている子のレントゲン写真です。正常な子と比べると心臓が大きくなって気管を圧迫しているのがわかるかと思います。


心臓病が進行して心機能の許容を超えると肺に水がたまる肺水腫という状態になることもあります。肺水腫の状態は簡単に言うと溺れているような状態ですので苦しくなってしまいます。写真の白いところが水がたまった状態です。

最後に感染症です。
感染症ではウイルス感染や細菌感染など様々に原因がありますが、
・子犬で咳をしている
・高齢で最近急に咳をし始めた
となると感染症はないかな?と考えます。※もちろんどんな年齢の子でも起こり得ます
感染症がもとになって咳をすることもあれば、もともとの気管の問題がある場合に二次的に細菌感染を起こして気管支炎を起こすこともあります。
熱が出ることもあるため、少し元気や食欲がなくなったり、鼻水が出たりと他の症状がある場合もあります。
こちらは子犬でウイルス感染が原因で咳が出ていると思われた子のレントゲンです。
レントゲン検査以外に血液検査で炎症反応と発熱がみられました。

こちらの子は気管支拡張症という気管支が拡張してしまった状態にありますが、これがもとで細菌やウイルス感染を起こしたと考えられ咳をしていました。

このように咳といっても原因によって治療法は様々で、加齢性の変化で様子を見ていても大きな問題とならない咳もありますが、はやめに治療が必要な咳もあります。
気づいた時には手遅れだったとならないためにも普段からご自宅で注意して見てみてください。
その際は先に示したような①~⑥をお伺いするのでポイントにして観察してみてくださいね。
しかし、毎日一緒に過ごしていると少しずつ生じてきた変化にはなかなか気づきづらいですよね。
そんな時はぜひ相談にいらしてください。そして1年に1回は健康診断で病気の早期発見に努めましょう!
きたのさと動物病院 併設/札幌どうぶつ皮膚科・耳科センター
- 〒003-0825北海道札幌市白石区菊水元町5条1丁目11-19
- 011-873-7883