フィラリア予防ってしないといけないの?
2023.7.10
こんにちは!獣医師の工藤です!
今年もフィラリアの予防シーズンが始まりましたね!
皆さん6月分の予防薬は飲ませましたか?
今回はこの時期よく聞かれる「予防薬って飲ませないといけないの?」という相談にお答えしていこうと思います。
そもそもフィラリア症とは犬糸状虫という細長い寄生虫が寄生することです。
フィラリアはわんちゃん(ねこちゃん)が蚊に刺されることによって感染します。
数年前までは北海道は本州に比べて感染の可能性は低いと言われていたようですが近年北海道でもわんちゃんのフィラリアの感染が認められ、今では積極的な予防が推奨されています。
道内で蚊を採って検査をするとフィラリアの子虫であるミクロフィラリアが認められることがあるようです。
では、フィラリアは実際に感染するとどのような症状が出てくるのでしょうか。
そのお話の前にフィラリアがどのように感染してしまうのか考えていきましょう。
わんちゃんが蚊に刺されるとき、フィラリアの子虫を持っている蚊からわんちゃんの筋肉にフィラリアの子虫が入り込みます。
入り込んだミクロフィラリアは2か月ほどの時間を経て筋肉内で大きくなり、次第に血管内に入り込みます。
血管内でも成長を続け、成虫になるころには心臓の血管にとどまり、そこで雄と雌が出会うと新たな子虫を生み、その後は血管内で虫を増やし続けます。
基本的にはフィラリアにとってわんちゃんたちは生きていくために必要な宿主であるので少数の感染であれば悪影響を及ぼすことがありません。しかし、血管内でフィラリアが増えすぎてしまうと血液の循環が悪くなり、その症状として咳、運動時にすぐに疲れる、お腹に水がたまる(腹水)などの症状が出てきてしまいます。
血管内で増えたフィラリアも寿命を迎えると血管内で死滅します。しかし、死滅したフィラリアはすぐには分解されず、血液と混ざって血の塊(血栓)になり、血管に詰まってしまうこともあります。
これらの症状は右心不全という状態であり、命にかかわる問題へと発展してしまいます。
気付かないうちに体の中で虫が増え続けると考えるととても怖いですよね。

私たちが毎月飲んでくださいとお渡ししているフィラリアの予防薬は実はフィラリアの感染を予防してくれる薬ではありません。
実は、ミクロフィラリアの駆虫薬であり、病気の発症を予防する薬です。
万が一体内にミクロフィラリアが入ってきてしまったとしても2か月ほどは筋肉内に潜んでいるのでその間にお薬で駆虫して病気が発症するのを予防しましょう。といったお薬です。

これらの薬は血管内に移行してしまったフィラリアへは効き目が弱いので必ず筋肉内に虫がとどまっているときにお薬を飲む必要があります。
そのため、もし感染していても1か月ごとに駆虫していれば病気の発症リスクはかなり下げられるだろう。といった具合です。
毎年、5月ごろに「もう蚊が飛んでいるのですが予防薬飲まなくて大丈夫ですか」と心配される飼い主様はたくさんいらっしゃいますが、私たちが6月からとお話するのは5月に万が一感染しても6月からお薬をしっかり飲めば発症は予防できると考えるからです。
逆に、11月ごろになり、「もう蚊が飛んでいないから薬飲まなくていいかな」と早期にやめてしまうと10月ごろに感染した子虫を残したまま来年の春を迎えるわけなのでそのころにはもう血管内にフィラリアが、、、となりかねないので早く始めるよりも終わりをしっかり忘れずに!というのを意識していただきたいです。

また近年、ねこちゃんにもフィラリアは感染するといわれています。喘息のような症状が出たり、中には突然死をしてしまうこともあるそうです。室内にも蚊は侵入してくる可能性があります。うちの子はきっと大丈夫だろう。とひやひやするよりは月1回のお薬で予防が可能なのでぜひご検討ください。ねこちゃんは背中につけるお薬で予防が可能です。

わんちゃんのお薬はおやつのタイプ、錠剤のタイプ、ダニとの混合タイプ、注射のタイプなど数種類あります。どれがいいかわからないという方は気軽にスタッフにご相談ください。



ちなみにうちのわんこは毎年おやつタイプですが、月に1度しかもらえない特別なおやつだと勘違いしています(笑)
きっちり予防して楽しい夏を過ごしましょう!!

きたのさと動物病院 併設/札幌どうぶつ皮膚科・耳科センター
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